革は経年変化していきます。長く使用されることを想定したものづくりをもっと意識しなくてはなりません。
自分への戒めとして、帰ってきたトートバッグ業務型を生き返らせることにしました。
丁度一年前に制作させていただいた最初期ロットのトートバッグです。作ってすぐはしっかりとした床ベロア革ですが、一年間使い込むと『クタッ』と柔らかくなって、さらに黒の色も深みが増して、写真のように味が出てきます。
この『クタッ』とした柔らかさが、初期型のトートバッグ業務型の良さでもあり、弱点でもあります。
初期ロットでは、一枚革でカバン本体の革を制作しておりましたので、パーツ取りの都合上、部分的に繊維の粗いところが来てしまいます。そして、今使用している床ベロア革に比べて、若干薄く厚さ1.5mm以下の革を使用しておりました。
すると、かばんを使い込むことで粗い方の繊維が徐々にほぐれて、重さに耐えられず、持手の付け根部分の革が裂けてしまうトートがちらほら出てきています。これは1年間使い込んでみないとわからなかった現象です。
※初期ロットで購入いただいたお客様には順次無償でお取替えかお直しで対応させていただいております。現在販売しているトートバッグ業務型に関しましては、上記の製品特性を考慮した上で改良を施しております。
トートバッグ業務用はそもそも、ワークショップ向けに革道具を運ぶために生まれたバッグです。ものが運べれば良いという程度のコンセプトで生まれたものでしたので、過剰なほど丈夫なトートバッグ2型に比べて、とにかくシンプルな構造を追及した結果とも言えます。一枚の床ベロアに対して、縦縫いしたラミー糸だけで重みを支えるという持手の構造は、今考えてみれば若干無理があったかもしれません。
トートバッグを生き返らせよう
そんなわけで一年経って手元に戻ってきたトートバッグ業務型。お客様に「気に入っていた」とのありがたいお言葉を頂き、せっかくお買い求め頂いたのに申し訳ない気持ちが湧いてきます。しかし、何というかもどってきたトートバッグを見て、日常的に使い込まれた感じがあって、捨てるのは何とも勿体ない。
裂けたベロアの部分を継当て補強し、持手を再び縫い直してみることにしました。手縫いだから縫い直しも可能です。もちろん縫い方も改良版の丈夫なT字縫いです。
マチに穴がぽっかり空いていました。ここは赤いラミー糸で縫い上げました。目立たないように裏側から縫うこともできますが、あえて表に見えるように縫ってみました。
手直し完成です。トートバッグが生き返りました。これでまだまだ活躍してくれるはずです。このトートバッグを使うことで、自分への戒めとすることにします。
皆様からのお言葉をお待ちしております
くも舎のポリシーでも記載している通り、壊れないものづくりを第一に心がけておりますが、新しい素材や作り方など日々工夫しながらやっていく中で、思いもよらない失敗をしてしまう事があるかもしれません。もし壊れてしまったり、気がついた点があった際には気兼ね無くご連絡、ご指摘下さい。そのお言葉で私自身成長できますし、もっと良いものをつくることができます。
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